2014年にNVC(共感コミュニケーション)を学びはじめた頃から尊敬し続けている大先輩の栗山のぞみさん。のぞみさんも同じくアクティビストで、共感的に人とつながる求道を続ける人。
NVCをはじめた頃、年上の人たちの「いい人であらねばならない」風のあり方がけっこう苦手だった記憶があります。こちとらロック魂を売り渡したくない気性なので。
そんな中のぞみさんは、とりつくろった感じがしなくて人間味があって新鮮な印象がありました。
ライターでもあるので言葉使いが洗練されてて、経験値ももちろん高く、キャラの強さもあって遠慮なく渡してくるニーズや感情の特定力がずば抜けていて、本人がポカーンとするくらいクリーンヒットな共感を投げてきてくださること多数。
カリフォルニアのリーダーシッププログラム(通称LP)に参加していた時、あれこれ心が動く時には、プログラム・アシスタントをしていたのぞみさんに泣きつき、何度救われたかわかりません。
そんなのぞみさんが”ダンスフロア”というワークをするというのでプライベートセッションをお願いしました。
”ダンスフロア”の特徴
NVCは臨床心理学から出てきたコミュニケーションスキルとして最近急速に社会での適用が進んでいます。が、NVCジャパンのダンスフロアのページに書かれているように「NVCは、言葉の使い方ではない」。
NVCの場を初めて経験した方から「言語化できないのだけれど、みんなの話を聞いているだけで温かな感情が流れ込んできました」といった感想をいただくことがあります。
言葉を超えたところにあるものをつかむことができるコミュニケーション法だと信じています。
”ダンスフロア”では、床に”サイン(シート)”を置き、そこに書かれた指示を体で感じます。
体験しきると次のステップに行け、セットを全部クリアすると、ゴール!という人間スゴロク(と言ってみる)。
「ダンス」とついてますが躍りません。移動する様を「ダンス」と呼んでるだけみたいです。
YES/NOダンス
いろんなシチュエーションに合わせたセットがあります。
私は自分ではすごく悩んでいて、のぞみさんくらいきっぱりニーズが見れて、かつ、お尻を蹴飛ばしてくれる人が必要な問題を抱えていたので、それで挑みます。
「自分が未来にやろうとしていることで、心が引き裂かれていることについて扱うセット=YES/NOダンス」を選びます。
”ダンスフロア”は、すべてのセットで「目撃してくれている人(ウィットネス)」が必要とのこと。
悩んでいる問題のステークホルダーでもある友人・ロミーちゃんに同席してもらいます。
具体的なトピックは、自宅の庭の一角に厨房を作りデリやパン屋さんをはじめ、自宅の一部に人が出入りする場所をつくる構想について。3年くらいぼんやり考えていて、いよいよ仲間が集まってきて資金繰りもできそうなのでやろうかなと思い、設計図も進めている段階。
時によって「やる!」と決めるときもあるし、「やっぱやりたくない」となるときもある。
選択と決断はできる方なので、これはずいぶんズルズルしていて、なんでかなーって思ってます。
「お店やる!」と「お店やらない!」のジャッカル大会
床に「intention frame(意図の枠)」と呼ばれる「意図の結界」を貼ります。
その中に、このセットのために必要なプロセスのシートを配置。
下から順番にシートの上に乗っかって、体にわき起こるエネルギーを感じます。そのエネルギーにのって、業界用語でジャッカリングと呼ばれる手法で表現します。
ジャッカリング(=ジャッカルする)とは、ジャッカル(オオカミに似てる動物)のように遠吠えをすること。
感情やニーズといった心の深いところにあるものを表現するスキルが未熟で、頭や口先で出てしまう判断・評価・批判のような言語です。「お前の母ちゃん、デベソ」的な。
シートに乗って、体の中を動くエネルギーを感じることに意識を集中します。
盛り上がったりしぼんだり、いろんなエネルギーがそのつど自分の中に動きます。
のぞみさんは、私のジャッカルを支援しながら、出きったと判断するまで、シートの上を行き来させます。
「あたしがやらなくて、誰がやるのよ!」とか、強がりな経営者時代に行っていたような言葉がたくさん出てきます。「ママとパパが残してくれた遺産を有効活用して(全共闘で平和活動家だった)ふたりが見たかったような世界をさっさとつくるの!」「こんなに期待されてるのに!」「せいちゃん(息子)だって楽しくて幸せになる」「資金計画も問題ないし、やらない理由がないでしょ」などなど。
ジャッカルの間を移動していると、だんだん感情も動いてきます。
「ママのようにはできない!」「場所もある、仲間もいる、資金計画も問題ないのにやらないなんて、バカじゃないの?」「今なら投資ができる金額があるのに、何もしなかったら、遺産をただ食べて消費して終わっちゃうよ。ゴクツブシって両親から言われてきて、やっぱりそうなんじゃん」「ママのようになりたくない!過剰に何かをすると、家庭を壊し子供に傷を残す!」「建築だけで120万、什器に80万。計200万。うまくいかなかったらドブに捨てるようなもんだよ。ママたちが残したお金を。しっかりやる覚悟もないのに投資することじゃない。そのまませいちゃんに残すべき」といった発言がだんだん出てきて、涙と鼻水がいっぱい出ます。
あーあ、何あつかっても亡き母の影響が強いということをいまだに思い知らされる。亡くなって9年経つけど、とほほ。
感情とニーズを確かめる
ひとしきり吐き出したら、キリンコーナーへ。
キリンとは、自分の感情や大切にしていることもわからないような不器用なジャッカルの言葉を、思いやりの言葉に翻訳できる愛の存在。
ジャッカルタイムに怒りや悲しみやぐちゃぐちゃのものも出し切っているので、自分の中でだいぶシフトがある体感覚。
「お店をやる」ということについてキリン的に自分の体を見てあげます。
ここでもまた、のぞみさんに行き来を誘導され「やると決めてるキリン」と「やらないと決めてるキリン」の往復をしたり、それぞれのキリンが大切にしているものを相手に伝え返してあげる時間をとります。これが、自分の中で相反している2つの意思の統合に近づく道。
”ダンスフロア”のコツは、ゆっくり体とつながる時間をとること。頭でわーっとロジックで考えようとすると、質の高い決定にいたらないので。世の中、ニーズにつながっていない、たくさんの決定によって不幸が起きてると感じます。ほんとうはそうしたくなかったのに、ね。
統合の時間へ
お店をやることで満たされる感情とニーズ
「やるのキリン」にあったのはこんな感情。
優しくて地味でしみじみとしていてcozy(心地よい扱えるサイズ感の)な、落ち着いた穏やかさがある。大丈夫だって思える。ワクワクして、肝の太い、タフさもある。怖さもある。
年商1億5000万のグループ(複数の株式会社)、うち一つは5,000万の赤字が永遠に消えなそうな事業を4年間回してたんだから大丈夫、その中でも昨対毎年125%伸ばしてたし、被災までしたあのビジネスをあんな短時間であそこまでしたんだから。自宅でこの規模(15平米)のことなんてチョロすぎる。ホテルは敷地4,000坪だったぜ。不動産も20個くらいあったよ。
10年前とはまったく別人だし、ビジネスの経験値はたっぷり積んでる、仲間も私にふさわしい価値観と作る世界観が一致している、私を愛し理解してくれていて、比類なく有能で、心から尊敬している人が集まってる。当時とはセッティングがまったく違う。
と「お店やらないキリン」に伝える。
そこにあるニーズは、
信頼、能力、広がり、コミュニティ、希望、可能性、笑い、クリエイティビティ、自己表現、成長、楽しみ、命の濃密さ、aliveness(生きていること)、インスピレーション、出会い、コラボレーション
「お店やらないキリン」は、受け取った内容を自分の言葉で伝え返す。
お店をやらないことで満たされる感情とニーズ
「お店やらないキリン」には、しぼんだ穏やかなエネルギーがある。
悲しみ、残念さ、怒り、自責、石のような感覚、あきらめ。安心、安全もある。ネスティング(巣をつくる)。ゆっくり、stillness(明鏡止水)。つまんない、退屈もある
プロフィールやこのブログを読む方々が「波乱万丈の人生ですね」とおっしゃるような濃厚な人生。
両親が相次いで急死し、震災、専業主婦から被災企業の経営者になり、夫が出ていきシングルマザーになり何度も心中を考えるような混乱の中で生き、やっと落ち着いたんだ。まだできていない様々な癒しをし、身辺を整え、体調や精神を整える余裕も欲しい。そういえば遺産は「子供に残すんじゃない、孫に残すんだ」と母が残したもの。息子を丁寧に育てることが私の優先順位、と「お店やるキリン」に伝える。
「お店やるキリン」は、「健康やお金に不安があって、困るし、悲しいし、煩わしいし、怖いんだね」みたいに伝え返す。
「お店やらないキリン」のニーズは、
クリエイティビティ、コミュニティ、aliveness(生き生きさ)、安定、精神的な落ち着き、(思考や所有物が)整理されていること、確かさ、自信、平穏、平安
互いに自分で伝え返しているうちにほっとする感じがあって、急に自分の中の何かが動く。
戦略性が高いのでさっさと解決策が浮かび、自然と最後の「統合」フェーズに自主的に行く。
そういえば(まだ申請出してない)持続化給付金が100万入ってくるはずだし。いずれにしても20万くらいの外構工事はするつもりだった。それで建築費の120万はまかなえるな、と肩の力が抜けたような安堵感。(持続化給付金のツケが息子たちの世代にいくことは、後日考えるとして)
私が見たい未来を信じてくれる人たちとの遊び場を、家の外に作るのはありだな。
ふたつが相反していたボトルネックは「バウンダリー」と「精神的な落ち着き」
自宅や自分の心の穏やかさという聖域は絶対に守る。その上で、二人のキリンにあるすべてのニーズを満たすことをやめない。ひとりでやらなくてもいい。お金は大丈夫。
そして結界を出る!「出れたー」と安堵。出れる気がしてなかった。。。
もうこの問題では悩みません!
すごいなー。日々選択し続けないといけない経営者の頃知りたかったよ!!
過酷な時期は週2回コーチングを入れていたあの時代。NVCがあったら、どんなに幸せな選択ができていただろう。無念。
のぞみさんや、ずっとみていてくれていたロミーちゃんからは「安定と挑戦の両立」や「継ぐものと手渡すものと」「体の健康がとても大切なんだね」というようなフィードバックをもらう。
気づきがついてくる
深いNVCのワークをすると、自分にはまったく見えていなかった角度で人生が俯瞰できてくることがあります。これもウィットネスしてくれてる方々の共感の力。私たちには目が二つしかないけど、人が増えれば視野が広がる。
二人からフィードバックもらって気づくのが、母方が「挑戦」の家系なこと。実の祖父は戦後のアントレプレナー、母もアントレプレナー、母の育ての父はジャーナリスト。一方、父方は没落した地方の名家で、祖父は大変な努力の末、教員として人生をまっとう、祖母も教員。それはきちんとした家庭だった。
母は「ふつうの家の人と結婚して安定する」ことを配偶者選びの基準に父を選んだとも聞いた。
弁護士を目指していた父は、大学4年の時に私ができたためもあるのか法学の道を捨てほぼ国営企業な大企業に勤務。母の事業を金銭的に支え続けた。「安定」のために犠牲とも言える努力をし続けた父方の血。
そんなたくさんの先祖たちの人生の上に、自分や息子の命があることをありがたく感じる。
体に入り込んでいるいくつかの血脈が私の中で時にぶつかりあってプログラム停止することもある。
大変な努力と、子供たちのためにという意図を持って頑張っていた部分もあるであろう先祖たちの愛を引き継ぎながら、そのおかげで今できるクリエイティビティを自分のできる範囲で発揮していきたい。と、自分の命の使い方にも考えが及ぶ。
そんな80分の旅。どっと疲れた。2020年のクリスマス。
ぜひ体験してみてね!
書いていると簡単なプロセスのように見えるかもしれませんが、この”ダンスフロア”。セットだけあっても自分ひとりでは絶対できない自信があります。
洗練されたジャッカル語を使いこなすのぞみさん♡だからの絶妙なファシリテーションが随時あることでプロセスがすすむ。また、経験値からくるのぞみさんの「よし、次ここいける、今ここのシートに乗ってみて」みたいな読みの良さがあってのたまもの。
おすすめすぎです。
ご興味のある方はNVCジャパンのサイトからコンタクトしてね♡
一緒に参加したロミーちゃんの体験記も併せてどうぞ!ブロガーのロミーちゃん、私より読みやすい明晰な文章で書かれております!
写真は、冬至(12/21、母の9年めの命日)に、女神とのサークルでベールを借りて。黄色とこのピンクの混じった美しい色。実はピンクが好きなんだけど似合わないって思ってて。最近スペシャルなカラーコーディネーターのセッションを受けたことで、受け入れられるようになりました。
大好きだった祖母が好きだった薄紫、母が好きだった青みがかった薔薇色。私は彩度の高いアシッドピンクが好き。「私はこう」って祖母と母に宣言できるような心境の46才。成長って時間がかかる。